6月4日、日本水連が新たな方針をを発表し話題となりました。
それはドーピングを容認する大会などに参加した選手、関係者をいかなる競技会やイベントから除外するというものでした。
目次
エンハンスト・ゲームズ
今回この方針が出される要因となったのはエンハンスト・ゲームズ主催の水泳大会でした。
同大会はステロイドなどの国際大会で禁止されている薬物の使用を容認しています。
世界水連からの「資格停止」の処分を受け、エンハンストゲーム側は以下の三つの主張をしています。
- 世界水連のこの措置は選手を守るためのものではなく市場を独占するためではないか?
- 選手たちは連盟が与えてこなかった、自由、公平性、報酬を得ることができる
- 人間の新たなカテゴリーを創造する
要は、自分たちの大会の正当性とそれを批判する水連の批判をしているというわけです。
「自由な大会」
こういわれると聞こえがいいかもしれません。
しかし、この自由は正当なのか
これを考える必要があります。
そこでスポーツにおいてドーピングが禁止される理由を考えてみましょう。
日本アンチドーピング機構はドーピングを禁止する理由は大きく四つあるとしています。
ドーピングを禁止する理由
1、アンフェア
スポーツは、同じルール、同じ条件のもとで競いあうから感動が生まれます。ドーピングはスポーツにおいても最も重要な公平性を根本から否定する不誠実な行為です。
Real Winner 日本アンチドーピング機構
2、スポーツ固有の価値を損なう
ドーピングの公平性に議論するにあたってこのような意見があります。
ドーピングを認めることは逆にフェアなのではないか
例えば、お金のある人は整備された練習場でコーチをつけて練習できますがお金がない人は練習場もなければコーチもいません。
これはフェアですかね?
サッカー、バスケ、野球など様々なスポーツで身長が高い方が有利です。
これはフェアですかね?
このようにスポーツというのはフェアではない要素というのがいくつかあります。
ドーピングにおいてもそうです。
使う人と使わない人で差が生まれてしまいます。
そこで容認すればここの差は生まれないのではという話になります。
これがドーピングはフェアなのでは?という所以です。
しかし、ドーピングを容認することはスポーツとしての価値を奪ってしまうのです。
ドーピングのように人工的に作ったもので能力を上げることが容認されれば様々な能力向上アイテムが出てくるでしょう。
例えば、速く走れるようになる靴です。
これを少し飛躍させると速く走れる足を取り付けるという話になります。
速く走れるようになる手、体、人工の肺や心臓。
こんなのを付けた人同士のスポーツはスポーツですか?
僕はロボット同士の対決でこれはスポーツではないと思います

このように人工的なもので能力を向上させることはスポーツとしての価値を失うことになってしまいます。
ドーピングも人工的に能力をあげる道具です。
これを容認するということは、それはスポーツの価値を損ねることになってしまいます。
社会悪である
トップアスリートが、社会や青少年に与える影響力は非常に大きなものです。トップアスリートがドーピングを行うことにより影響を受けた青少年がドーピングに手を染めてしまう。また、スポーツに関係のない人々への健康被害や倫理観の欠如といった問題を引き起こしてしまいます。
Real Winner 日本アンチドーピング機構 h1-4_ol [更新済み]
トップアスリートの真似をしたくなるのは誰しもあることでしょう。
僕が小学生の時、ネイマールに影響を受ける人が多く、わざと転ぶ「シミュレーション」がはやりました。
ドーピングを容認しトップアスリートが使うようになれば、体への健康被害が大きい未成年も使うようになるでしょう。
競技者自身の健康を害する
ドーピングに使用される物質はもともと、治療目的で開発されたものが多く、使い方によっては副作用に苦しむことになります。
「ドーピングは危ない」
これはよく聞く話だと思います。
しかし具体的にどのように危ないかは知らない人が多いと思います
今回はドーピングでよく使われる「ステロイド」を使って危険を説明したいと思います。
ステロイド
ドーピングで使われるステロイドは「アナボリックステロイド」というものです。
これはテストステロンの同位体でありアミノ酸からタンパク質を合成する作用があります。
これにより筋肉の成長を促し、筋力と活力を増強させます。
しかし、このステロイド、副作用が多くあります。
- 男性:女性化乳房、精巣の縮小、精子数の減少
- 女性:禿頭、過剰な体毛、乳房の縮小などの男性化
男女でそれぞれ上のような症状があります。
男性にステロイドを打つと体内の中のテストステロンの量が急激に増えます。
そしてテストステロンの過剰が脳に伝わります。
そうすると「もうテストステロンはつくらなくていい!」
という信号が送られます。
テストステロンは精巣で主に産生されるのですが、脳からの信号によって産生をやめます。
産生をやめるということは精巣の働きがなくなるということです。
働きが弱まると一般的に臓器は小さくなります。
これにより精巣が縮小し、精子が減少してしまいます。
また、テストステロン(男性ホルモンの一種)が増えるとエストロゲン(女性ホルモン)も増やそうと脳が信号を出します。
これは体の恒常性によるものです。
例えば、塩分接種の時にこの恒常性は大切になってきます
塩を取ると体の塩分濃度が上がりますよね。
これを防ぐために脳は水を取るように体に信号を出します。
そして、塩分濃度が一定に保たれるのです。
これと同じようなことが起こりエストロゲンが増えてしまい女性化乳房を引き起こします。
女性では、男性ホルモンであるテストステロンの増加の影響で男性化します。
ステロイドの副作用はこれだけではありません。
ステロイドを長時間使うことによってより重い副作用が生じます。
ステロイドを使い続けると悪玉であるLDLコレステロールが増加し、善玉であるHDLコレステロールが減少します。
LDLコレステロールが増えると血管壁に蓄積して血液が通りにくくなります。
健常な状態であればLDLが血管壁にたまる前にHDLコレステロールがLDLコレステロールを持っていくため血管壁にたまることはありません。
しかし、HDLが少ないため血管壁にたまってしまい高血圧、脳卒中、心臓発作、血栓などを起こします。
少し、違いますが簡単に表すと以下のようになります。

また、ステロイドには攻撃性が増すなどの精神作用があります。
抑うつを起こしたり。非理性的な行動を起こしてしまうことがあります。
ステロイドがかなり危険なことをわかっていだたけたでしょうか?
まとめ:ドーピングはよくない
ドーピングは「勝ちたい」という思いの強さから生じる違法行為です。
しかし、それは自分の体、スポーツ、そして社会全体に悪影響を及ぼします。
今回の日本水連が世界水連にのっとりドーピング公認大会へ参加した選手への処分の方針を発表したのはスポーツを守るという観点で僕はよい判断だと思いました。
エンハンス・ゲームとしては「ドーピングを使う自由」を主張してはいますが認めていい自由と認めてはいけない自由があることを忘れてはなりません。
何でもかんでも自由を認めてしまえば、それは無法地帯となってしまいます。
スポーツに限らず、自由の線引きはとても大事です。
それを再認識する事案だったのではないかと思いました。
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